USPTO、査定系再審査におけるRPI(真の利害関係者)開示義務を提案
2026年7月22日
査定系再審査の請求時にすべてのRPI(真の利害関係者)をUSPTOに開示することを要求する。しかし請求人が希望する場合にはRPIの情報は一切明かさない。
Summarized by Tatsuo YABE on 2026-07-23
Federal Register / Vol. 91, No. 139 July 22, 2026/ Proposed Rules
パブコメ受付期限:2026年8月21日
USPTOは2026年7月22日付の規則改正案において、第三者による査定系再審査(Ex Parte Reexamination)の請求時に、全てのReal Parties in Interest(RPI:真の請求人)をUSPTOへ開示することを義務付ける新たな規則(37 CFR 1.510(b)(7))を提案した。
現在の制度では、米国特許法302条に基づく査定系再審査請求にはRPIを開示する法的義務はなく、米国特許法301条(e)項及び37 CFR 1.501(d)に基づき、第三者は匿名(殆どの場合、米国代理人事務所が請求人となる)で再審査を請求できる。USPTOは、現行制度では請求人の身元を把握できないことを認めている。 一方、IPR(当事者系レビュ手続き)では米国特許法312条(a)(2)により、請求人は全てのRPIを開示しなければならい。 これはAIA(America Invents Act: 2011年に成立)により導入された米国特許法315条(e)項、325条(e)項のEstoppel(*1)を適切に運用するための前提となっている。
(*1)USPTOにおいて重複する争いを禁止する制度: 例えば、一旦IPRで無効にできなかった特許を同じ請求人が同じ先行技術あるいはIPRで提示できたであろう先行技術でもって再度再審査で無効を主張できない。
確かに、現行の再審査請求においても請求人は、規則1.510(b)(6)に基づき米国特許法315条(e)項あるいは325条(e)項のEstoppelに該当しないことを陳述しなければならない。さらに、規則11.18(b)においてUSPTOに対する書面での陳述は偽りがなく、誠実な対応をすることが規定されており、それに反する場合の罰則が同規則(c)項で規定されている。 これら2重の規則(1.510(b)(6) & 11.18(b))は性善説に立脚するもので、現実には同じ特許が幾度もUSPTOで無効化の手続きが取られている。言わば、査定系再審査で匿名請求を許容したままではUSPTOにとって規則1.510(b)(6)が順守されているか否かを判断しようがない。
もっとも、本改正案は匿名制度そのものを廃止するものではない。USPTOは、米国特許法301条(e)項(*2)が要求しているのは、「公衆に対する匿名性(confidentiality from the public)」であり、「USPTOに対する秘匿」まで要求しているものではないとの解釈を示している。そのため、RPIはUSPTOには開示する一方、請求人の希望により、その情報は特許ファイル及び再審査ファイルから除外され、一般には公開されない仕組みが提案されている(改訂規則案 1.510(b)(7))。 注意すべきは、再審査請求人が書面で公への非公開を請求しない場合には公開されPatent Centerにも反映される。
(*2) 米国特許法301(e)の立案において連邦議会は「公衆に対する匿名性(confidentiality from the public)」の重要性を認識している。 公に対する匿名性が担保されない場合には競合者がUSPTOに先行技術を提示するのを躊躇してしまうだろう。H.R. Rep. 96–1307, 6, 1980 U.S.C.C.A.N. 6460, 6465.
コメント:
昨年9月にSquires氏がPTOの長官に就任して以降、数多くのIPRが長官の職権により理由を述べることなく不受理となっている。さらに、本年2月には、2件の審決の先例指定を解除してまでIPR請求時にRPI全てを開示することの重要性を示した。半導体、AIなどの先端技術分野において、外国の国家支援主体が裏で資金提供し、米国企業を標的にPTAB請求(IPR請求)を行うという問題が顕在化したことを重く見ている。その結果、RPI開示要件の厳格化という利害関係者の「透明性重視」の方向へ明確に舵を切った。
このように、IPR請求の不受理率とRPI開示の厳格化によって昨今ではIPRの代わりに査定系再審査の請求数が増加傾向にある。 査定系再審査は匿名での請求が可能なので、当然のことながら、外国の国家支援主体が裏で資金提供し、米国企業を標的にすることは可能であり、この抜け穴を防ごうというのが今回の規則改定(案)である。 なお、今回の改訂規則が成立したとしてもUSPTOにはRPIを通知するものの、公(公衆)には非公開の請求をすることが可能なので、誠実な再審査請求人(日本企業)には実体的な影響はないと言えよう。
------------------------------------------------------------------------
規則改定(案)
37 CFR 1.501 特許ファイルへの先行技術文献及び書面陳述書の提出
(d) 提出者の身元(Identity)
本条に基づき情報を提出する者が、その身元を特許ファイルから除外し、秘密として取り扱うことを希望する場合には、提出書類は提出者を特定できる情報を一切記載することなく、匿名で提出しなければならない。
解説
現行の規則とほぼ同一で、上記下線部のみ追加された。これは第三者情報提供(米国特許法301条)の規定であり、302条で規定する査定系再審査には適用されない。つまり、情報提供に関しては「提出者を完全に匿名にしたまま提出できる」という従来の制度が維持される。
37 CFR 1.510 査定系再審査(Ex
Parte Reexamination)の請求
新設される規則(案)
(b)(7)
査定系再審査を請求する第三者請求人は、当該再審査請求に係るすべてのReal
Party in Interest(真の利害関係者)を特定する別紙の陳述書を提出しなければならない。この陳述書は、USPTOが定める方式に従って提出しなければならない。なお、第三者請求人が書面により請求した場合には、この陳述書は特許ファイル及び再審査ファイルから除外され、秘密情報として取り扱われる。
以下、ChatGPTによる改訂規則の図説

Illustration generated with ChatGPT (OpenAI)
以下参考:
第301条 先行技術及び陳述書の引用
(a) 一般
何人も如何なるときにもUSPTOに対し,文書をもって次のものを引用することができる。 (1) 特許又は印刷刊行物による先行技術であって,同人が特定の特許の何れかのクレームに係る特許性に関係があると信じているもの,
(e) 守秘性
(a)に従って先行技術又は陳述書を引用する者からの書面による請求があるときは,同人の身元は特許ファイルから除外され,秘密が守られるものとする。
------------------------------------------------
第302条 再審査の請求
何人も,如何なるときにも,特許の何れのクレームについても,第301条の規定に基づいて引用された先行技術を基にして,USPTOによる再審査を請求することができる。請求は,書面によるものとし,また,第41条の規定に従って長官が設定する再審査手数料の納付を伴わなければならない。請求書は,引用された先行技術を再審査が請求されるすべてのクレームの各々に適用することの適切性及びその態様を記載しなければならない。請求者が特許権者の場合を除き,長官は直ちに,特許についての記録上の権利者に請求書の写しを送付しなければならない。
------------------------------------------------
第315条 他の手続又は訴訟との関係 -- IPR
(e) 禁反言
(1) 318条(a)に基づく最終決定書に帰着する,本章に基づく,特許クレームについてのIPR請求人又はその真の利益当事者若しくは請求人の利害関係者は,請求人が前記IPRで提起した又は合理的に見て提起することができたと思われる理由に基づいて,そのクレームに関し,USPTOにおける手続を請求又は維持することはできない。
------------------------------------------------
第325条 他の手続又は訴訟との関係 -- PGR
(e) 禁反言
(1) 328条(a)に基づく最終決定書に帰着する,本章に基づく,特許クレームについてのPGR請求人又は真の利益当事者若しくは請求人の利害関係者は,請求人が前記PGRで提起した又は合理的に見て提起することができたと思われる理由に基づいて,そのクレームに関し,USPTOにおける手続を請求又は維持することはできない。
------------------------------------------------
37 CFR § 1.510 - Request for ex parte reexamination.
§ 1.510 Request for ex
parte reexamination.
(a) Any person may, at
any time during the period of enforceability of a patent, file a request for
an ex parte reexamination by the Office of any claim of the
patent on the basis of prior art patents or printed publications cited
under § 1.501, unless
prohibited by 35 U.S.C.
315(e)(1) or 35 U.S.C.
325(e)(1). The request must be accompanied by
the fee for requesting reexamination set in § 1.20(c)(1).
(b) Any request for reexamination must include the following parts:
(1)
(2) … (5)
(6) A
certification by the third party requester that the statutory estoppel
provisions of 35 U.S.C.
315(e)(1) or 35 U.S.C.
325(e)(1) do not prohibit the requester from filing
the ex parte reexamination request.